このページでは、材料科学向けの3次元画像処理ソフトウェアの比較を行います。比較の対象として、3D Slicer、Amira/Avozo、Dragonfly、VGSTUDIO Maxを取り上げます。ImageJ(Fiji)も追加しようかと少し悩みましたが、ImageJはもともと2次元画像処理をするためのソフトにいくらかの3次元機能を追加したものであり、3次元の本格的な処理をしようとすると機能面でも速度面でも不足するため、今回は対象から除外しました。
ここで挙げたソフトウェアでは、どれでも、3次元可視化、セグメンテーション、距離の測定、体積や形状の測定、動画の出力など、基本的な操作が可能です。ただし、それぞれに特徴があるので、解説していきます。
3D Slicer
- オープンソースのソフトウェアです。
- 商用でも無料で利用できます。
- オコミュニティによる開発が活発であり、無料で利用できるプラグインが非常にたくさん公開されています。
- 最新のDeep Learningセグメンテーションが可能なプラグインなど、有志による開発が非常に活発です。
- 比較的簡単にプラグインを作ることができます。プラグインを作りやすさにおいて、ほかのソフトウェアに対して大きな優位性があります。PythonまたはC++が書ける場合は、自分の思い通りの機能を追加できます。すべてがオープンソースであり、完全な機能にPythonまたはC++からアクセスできます。
- 使い勝手は機能によってまちまちですが、Amira/Avizo、Dragonflyで可能な処理のほとんどを実行できます。VGSTUDIO Maxが得意とするような寸法測定の機能は、最低限のものです。
- 無料なので、複数のコンピュータにインストールできます。コンピュータを買い替えるときも、複雑なライセンス移行の手続きは必要ありません。
Amira/Avizo
- 他のソフトウェアよりも画像処理フィルターの種類が充実しており、非常に複雑な処理でも、ソフトウェア内の機能を組み合わせることで実現できることがほとんどです。
- 研究開発段階での分析にフォーカスしたソフトウェアであり、柔軟性は非常に高いです。一方で、その機能の多さのせいで、難しいと感じる人が多いのも事実です。
- 用途に特化した機能が有償オプションになっており、流体シミュレーション、多孔質解析、繊維解析、メッシュ生成などがあります。これらがひとつのソフトウェア内で完結することは優位性のひとつです。ただし、すでにこれらの用途の専用ソフトウェアを利用している場合にはメリットは大きくありません。
- 寸法測定を得意とするAvizo for industrial inspectionというエディションがありますが、この用途で使うなら、VGSTUDIO Maxの方が優れています。
- PythonまたはC++による拡張が可能ではありますが、普段コードを書いている人でも、独自の仕様を理解する必要があるため、プラグインの開発は容易ではありません。オープンソースではないため、アクセスできない機能も多くあります。
- 価格は、有償のソフトウェアの中では高めで、400~800万円程度となることが多いです。
Dragonfly
- ユーザーインターフェイスが整理されていて、使いやすいという評判があります。
- 特に、Deep Learningによるセグメンテーションは、他のソフトウェアと同じく繰り返しの作業が発生するものの、Dragonflyのユーザーインターフェースは労力を最小限に抑えてくれます。Amira/Avizoと比べたときの優位性のひとつです。
- 3次元可視化が非常にきれいです。その分、良い性能のコンピュータを用意する必要はあります。
- Pythonによる拡張が可能ではありますが、普段コードを書いている人でも、独自の仕様を理解する必要があるため、プラグインの開発は容易ではありません。オープンソースではないため、アクセスできない機能も多くあります。
- 価格は、有償のソフトウェアの中では安めで、100~300万円程度となることが多いです。非商用の場合は無料で利用できます。
VGSTUDIO Max
- 部品の寸法測定や、幾何学形状の検証、欠陥解析などの、製造と生産のプロセスで必要な計測に特化しています。それらの用途で利用する場合は、明らかに他のソフトウェアよりも機能面で勝ります。
- 開発元のVolume Graphics社の別ソフトウェアのVGinLINEと組み合わせることで、CTスキャナと連動した自動テストワークフローを構築できます。
- ごく基本的な操作は簡単ですが、それ以上を習得しようとすると、とたんに難しいと感じる人が多いです。
- セグメンテーションの機能は、工業部品のようにコントラストがはっきりしているものに対しては有効なものですが、Deep Learningが必要になるようなモヤっとした画像のセグメンテーションには向いていません。
- 生産段階にフォーカスしたソフトウェアであり、研究開発段階での柔軟な分析には使いにくい場合があります。
- 価格は、有償のソフトウェアの中では高めで、400~800万円程度となることが多いです。